2012年01月30日
川本 裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | 経歴はこちら>> |
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記事の質を上げるためには、事実・データを統計的な手法を含めて独自に分析したり、基礎的な資料を集めたりするスタッフも必要だろう。筆者は外資系コンサルティング会社で働いた経験を持つが、優秀なリサーチャーの存在はそのレポートの質に決定的な意味を持つ。新聞記者もインフラがないと、戦えない。「背中を見て覚える」部分もあろうが、現代社会では科学的なサポートや情報武装は必須である。
トレーニングの中にはグローバルな視点や外国語力も含まれるだろう。筆者は授業でよくG8やG20のコミュニケ、欧米政府・中央銀行のステートメントを資料として使うのだが、日本の新聞の報道と内容のニュアンスが違って戸惑うことがある。先日もワシントンの会議を取材に行ったという記者に「コミュニケは読んだの?」と聞いたら「財務省のレクを聞きました」とのことだった。日本政府のブリーフィングだけに依存していては、世界に通用する報道の質は実現できないのでは、と懸念される。最近の日本企業の社員の英語力向上への注力はすさまじい。若い世代からどんどん英語力がついていくと思われる。その時に新聞が企業にキャッチアップしているか心配だ。
第三の期待は常にイノベ―ティブであってほしいということだ。電子媒体が急激に広がり、広告収入の落ち込みで、新聞社の経営はこれまでになく厳しく、ビジネスモデルの転換の会議をいくつも重ねているだろうことは想像がつく。しかし、そうはいっても、破産や解散、部門切り離し、といって大リストラを迫られている欧米のメディアに比べれば、まだまだ余裕がある。この機に商品のレビューを徹底的におこなってほしいと思う。
政局報道でも世論調査の解説でも、「読者がのぞんでいる」「読者の知りたいことを報道している」ということはよく聞く。しかし、現在の調査方法は正しいのか、不断のレビューが必要だ。マーケティングの基本は消費者サーベイだが、やり方はよほど注意しないとマンネリ化を免れないのは世の常だ。
今のままでは、インターネットの人気ブロガーのブログや海外メディアの翻訳版を見て問題の本質や考える枠組みを獲得し、日々のニュースは通信社やグーグル・ヤフーなどで知る、という層が多くなっていくのではないだろうか。
ジャーナリストの本性は「飽くなき好奇心」ではないかと思う。現状に安住しないイノベーション・自己改革は、新聞メディアの天命として取り組んでほしい。日本の閉塞状況の打開の先兵になる資格がメディアにはあるはずだ。
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