新聞案内人詳細

2011年11月14日

川本 裕子 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 経歴はこちら>>

信頼を失う日本の企業統治(1/3)


 オリンパス問題を機に、日本の企業統治に大きな不信の目が向けられている。失敗を明るみに出したくない社員による会計操作や損失隠ぺいは、日本だけの事象ではなく、他の国にも存在する。しかしこれほど長期にわたり、巨額の虚偽が上場企業のトップによって引き継がれていたことに、不名誉な意味で国際的な注目が集まっている。
 当初はイギリス人の新社長が日本の企業文化に合わず解任されたというのが日本での報道ぶりだった(解任は10月14日)。 つまり、当初日本のメディアはウッドフォード前社長の主張を伝えるのに熱心ではなかった。しかし、前社長が海外メディアに情報を発信し、海外の規制・捜査当局が調査中とも伝えられるとともに、オリンパスの内外企業の買収で巨額の減損処理が行われ、海外会社のM&Aに多額の手数料が実態不明の企業に支払われ、新社長が社内でこれを追求して解任された模様だ、という情報がじわじわと広がっていく。その中で10月26日、ウッドフォード解任を主導した菊川氏が社長を辞任。11月7日、ついに副社長が粉飾決算を認め、菊川元社長も認識していたことがわかる。
 今回、日本の当局の初動は鈍く、報道も会社発表をそのまま伝えることが多かったと言わざるをない。分析や論評なども海外の動きに比べ大きく出遅れた。筆者は事件が最初に報道された時、ちょうど海外出張中だった。普段は親日の欧米の経済人たちが厳しい批判を向けているのを目の当たりにし、内外の温度差に愕然として帰国した。

新聞案内人コラムへ投稿する

前回の新聞案内人

渋澤 健
渋澤 健 コモンズ投信会長 経歴はこちら>>

TPP交渉参加で線を引く

 野田首相が10日、TPP交渉参加についての「政治判断」を表明するはずだった記者会見を延期した。  それぞれの立場によって国民の賛否が異なることは当然のことであるが、その様々な意見を集約、整理、・・・>>続き

2回前の新聞案内人

松山 幸弘
松山 幸弘
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

公的年金の行き着く先

 厚労省が10月11日の社会保障審議会年金部会に年金の支給開始年齢を68~70歳に引き上げる案を提出したことから、久しぶりに年金報道が活発化した。しかし、早くも10月26日には小宮山厚労相が同案を・・・>>続き

3回前の新聞案内人

加来 耕三
加来 耕三
歴史家・作家

蘇軾――肯定の生涯

 震災は人や土地に被害を与えるのではなく、人や土地が被った被害の大小が、人々の心を通して震災を印象づけるものである。要は、心の持ち方ではあるまいか。  「天、必(ひっ)すべきか」  この言葉を・・・>>続き

ご購読のお申し込み

3紙おすすめイベント

特集・座談会シリーズ

シリーズ座談会「日本のビジョン」
 シリーズ座談会「日本のビジョン」、第4回は「震災復興の今と課題」。朝日、日経、読売3紙の現地編集トップが被災地の生の姿を語り合いました。
出来事ファイル 2008-2012年
あらたにす開設以来の月別主要ニュースを号外と写真を中心に振り返ります。
少年の主張全国大会(わたしの主張2011)
全国の中学生による2011年「少年の主張」全国大会の模様をお伝えします。
シリーズ座談会「日本のビジョン
三紙の論説、編集委員が徹底討論。第3回は混乱する日本政治の再生を考えます。
JGA 3大オープンゴルフ特集
9月29日スタート!ゴルフ3大イベント「日本女子オープン」「日本オープン」「日本シニアオープン」を特集します。
シリーズ座談会「日本のビジョン」
朝日・日経・読売の編集委員が徹底討論。第二回は財政や税、復興資金などを多角的に考える「どうする復興財源」です。
シリーズ座談会「日本のビジョン」
朝日、日経、読売の論説・編集委員が徹底議論。第1回は原発事故を経た日本のエネルギー政策。
「2011年の世界」3紙座談会
国際問題担当エディター・編集委員が2011年の世界の注目点を議論しました。
【特別リポート】欧州財政再建と市民-英国の現場から
福祉切り下げや増税など、痛みを伴う改革への市民の反応を報告します。
3社論説トップ鼎談2010
鳩山政権が初めて迎えた新しい年。直面する「政治とカネ」「日米関係」「デフレ」などの問題に議論を交わしました。
麻生内閣総理大臣と鳩山民主党代表による党首討論(2009年8月12日)


3社論説トップ鼎談2009
あらたにす開設1周年 今年も論説委員会トップ3人が激論。
3紙「年金提言」座談会
老後を支える年金制度の改革案を議論しました。
2008年 3社論説トップ鼎談
社説を書く論説委員会トップ3人が年頭に激論。

あらたにす便り