新聞案内人詳細

2011年05月26日

川本 裕子 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 経歴はこちら>>

東北復興で日本は変われるか(2/3)


  民間主導の経済循環を

 他方で気になるのは、東京電力の損害賠償スキームの政府案を見て、「やはり日本は既存の大企業の保護が優先し、新規参入には厳しい経済システムだ」という反応もあることだ。リスクに日々挑み、身を削る思いでベンチャーへの投資活動をしているある投資家の一人が、「なぜ東京電力の株式だと保護されるんでしょうか」と、ぼやくように嘆息したという話も聞く。ことは資本主義の基本的あり方に関わる。
 東北の復興には多様で大胆なアイデアが不可欠であるが、それを持ち込むのに民間部門の果たす役割は大きい。復興は日本全国、さらに海外から優秀な人材や潤沢な資金を得て進めることでより早く、より大きく、より豊かに展開できるはずだ。東北に民主導の経済循環を作り出すことを目標にすべきだ。政府としては、復興に向けて、民間企業が新規参入をしたり、投資家が投資しやすい環境を作る役割が何よりも重要だ。
 例えば一次産業の復興も、農地や水産施設を集約化し、株式会社による事業実施を可能とすることにより、内外から民間資金が流入し、優れた人材が域外からもやってきて知恵を絞ることで大きく進む。そのためには、これまでの一次産業への参入規制や土地集約化のルール、場合によっては所有権のあり方についても見直しが必至だろう。東北広域経済特区のような構想を、スピード感を持って実現していく必要がある。

制度改革も不可欠

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松山 幸弘
松山 幸弘 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 経歴はこちら>>

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関 志雄
関 志雄
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加来 耕三
加来 耕三
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