2011年02月09日
川本 裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | 経歴はこちら>> |
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一方で、メディアが本来の問題を過少にしか伝えていない面もあるのではないか。たとえばグローバル化は日々のわれわれの生活の一部になっている。輸出入はGDPの30%である。その時に、海外の情報に特化しているページは全20数ページの中で2-3ページ。何十年もほとんど変わらないのではないだろうか。これはグローバル時代の日本人の問題の捉え方として適切なのだろうか。
また、市民生活に大きな影響を及ぼす政策の変化はあらゆる人が興味をもつ事柄だが、政治家と政治家が話してどうだったかといった、いわゆる政局的なニュースをどれだけ国民が興味を持っているのかは疑問だ。「政局から政策へ」の流れの中で、読者にとっての問題の重要性に即した紙面編成になっているのか不断の見直しが必要ではないか。
○予算編成より執行や決算
政策についても、たとえば予算といえば年中行事のように年末の予算案の時に大きな記事になって盛り上がる。そもそも予算の骨格は8月の概算要求で原型ができるのであって、それ以降大枠は変化しないはすだ。事業仕分けが注目を集めたように、公金の使い道への市民感覚が先鋭化する最近、恒例的な予算編成の報道よりも、決算や予算の執行という側面を丁寧に追って国民に伝える報道を強化すべきだろう。
メディアの問題の捉え方次第で本来の問題が隠れてしまったり、必要以上に問題化されることがあり得る。他方、バランスのとれた問題意識を持ち続けることができれば、国民の信頼を勝ち得る。不断の検証とオープンな姿勢が重要となろう。
→あす(10日)の新聞案内人は、コラムニストの栗田亘さんです。
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社会保障・医療問題の専門家。保険会社勤務や民間医療法人の理事、海外研究所での研究員、厚生省研究班のメンバーなどの経験があります。国の制度・政策と現場の実情、海外事情に通じた立場から社会保障や医療を論・・・>>続き