2011年11月14日
川本 裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | 経歴はこちら>> |
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国家のリスク 問われる当局・メディア
日本の当局や経済界、メディアが大胆で明確な行動をとらなければ、日本の企業統治に深刻な問題があるというイメージが定着してしまう懸念が現実化している。日本の株価が低迷しているのもこのような懸念を織り込んでいるからかもしれない。エンロン事件のあと、アメリカ人が社外取締役を引き受ける時に、独自にデューデリジュエンス(会社や事業に対して問題がないかどうかを調査すること)をして、会社の決算に虚偽がないか確かめる、という事例を聞いたが、日本の会社の役職を引き受ける時に、外国人からそのような要求が出てくるかもしれない。グローバル化を進めなければいけない今の時代に由々しき事態だ。
ウッドフォード氏は自らの行動の根拠を「受託者責任(fiduciary duty)」、つまり株主から託された資金への責任という言い方をしている。同氏を解任した元オリンパスのトップは日本の企業文化、秩序維持を旗印に掲げたが、それは実際何だったのか。日本の企業文化とは結局虚偽申告により損失隠しをすることだったのか、と言いたくなる。
本件への対応は、日本企業全体の信頼性が問われており、国家のリスク管理にも及ぶ一大事だと思う。日本政府も当事者に対して正確な情報開示、説明責任の徹底を働きかけ、不正行為の解明と是正に全力で取り組むべきである。同時に日本のメディアが、本来期待されている役割を果たせなかった反省の上に立ち、既成秩序に対する客観的、中立的な報道姿勢を再度追求すべきではないだろうか。
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